気候変動対応

気候変動対応の戦略

バイタルケーエスケー・グループのコアビジネスである医薬品卸売事業に対して気候変動がもたらすリスクと機会の分析は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とIEA(国際エネルギー機関)が公表しているシナリオ(1.5℃シナリオ、4℃シナリオ)を用いて実施しています。物流を事業の核とする当社グループにおいては、気候変動がもたらすリスクが重大なリスクの一つであると捉え、全社的なリスクマネジメント体制に統合することで、経営戦略に反映しています。

医薬品卸売事業における気候変動関連リスクと機会

※1時間軸の定義:短期=~3年/中期=4~10年/長期=11~30年

※2影響度の定義:大=事業の大幅な縮小、または拡大するほどの影響がある/中=事業の一部に影響がある/小=ほとんど影響を受けない

項目 シナリオの概要 リスク・機会 時間軸※1 影響度※2 リスク・機会への対応
脱炭素経済への移行に伴う影響 リスク 炭素税・GHG排出に
関する政策の導入
  • 炭素税の導入により、操業拠点での化石燃料使用に伴う
    操業コストや運送コストが増加
  • GHG排出規制の強化に伴い、拠点における
    ノンフロン設備などへの切替・導入コストが発生
  • GHG排出規制の強化に伴い、EV・FCV車、蓄冷式冷凍庫への
    切替・導入コストが発生
短期~
長期
  • 太陽光パネルの設置や、再生可能エネルギー電力メニューへの
    切替・契約をはじめとした再生可能エネルギー由来の電力を利用
  • HV・EV車を導入
  • GHG排出量削減目標や排出量削減計画の検討を進める
  • 省エネルギー設備を導入
    (LED、再生可能エネルギー・高効率空調機、センサー式照明)
再生可能エネルギー・
省エネルギー政策
GHG排出規制の強化に伴い、EV・FCV車、蓄冷式冷凍庫への
切替・導入コストが発生
中期~
長期
機会 顧客・投資家からの評判 輸送をはじめとした事業活動において排出量削減活動が
求められ、取り組みが高く評価された場合、顧客・取引数が
増加および投資家からの評価が向上し、資金調達が可能となり、
株価が上昇する
中期~
長期
中~大 TCFDをはじめとした気候変動に対する取り組み内容を積極的に開示
気候変動による物理的な影響 リスク 異常気象の激甚化
  • 物流センターや物流拠点、支店の被災により、
    配達遅延や事業停止が発生し、売上が減少
  • 調達先の被災やサプライチェーンの分断により、
    商品の入荷が停止し、売上が減少
  • 拠点での災害対策や被害を受けた場合に、コストが発生
  • 従業員の出勤が阻害され、事業に支障が生じ、売上が減少
短期~
長期
  • 災害時でも安定した製品の供給を可能にする
    BCP(事業継続計画)の策定を進める
  • 災害対策を施した物流センターの導入を進める
  • 「毛細血管型物流網」を構築
  • ミニマムオペレーションの導入を進める
機会 感染症の増加 需要が急増したワクチンや医薬品の供給に
迅速に対応することで、売上が増加
中期~
長期
医療物資の需要拡大時でも、安定した製品の供給を可能にする
BCPの策定を進める

シナリオ分析結果

1.5℃シナリオ

医薬品卸売事業へのリスクとして、炭素価格に係る制度やGHG排出規制、再生可能エネルギー・省エネルギー政策への対応を要求されることが挙げられました。そのため、再生可能エネルギー由来電力の活用やHV・EV車の導入、省エネルギー設備の導入に取り組んでいます。
一方で、新たに獲得できる機会として、気候変動への取り組みに伴う顧客や投資家の皆様からの評価向上や、GHG排出権取引制度の拡充に伴う新たな事業収益源の獲得が挙げられました。そのため、全社的な気候変動に対する取り組みと情報開示に加え、低炭素輸送に取り組み、GHG排出量の削減分を付加価値として販売することを検討しています。

4℃シナリオ

異常気象による物理的な影響の発生が予想されます。医薬品卸売事業へのリスクとして、風水害によりバイタルケーエスケー・グループやサプライヤー企業が所有する設備が被災し、配送遅延や事業停止の発生が想定されるため、BCPの策定や物流センターへの災害対策に取り組んでいます。
一方で、新たに獲得できる機会として、気候変動による感染症の増加に伴い医療物品需要が拡大した際に、当社グループの物流体制の強みを活かした迅速な医療物品普及が挙げられました。そのため、これまで培ってきたネットワークを活かし、有事に備えた物流体制を構築していきます。

指標・目標

当社グループは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に、可能な限り1.5℃に抑える努力をするというパリ協定で示された世界共通の長期目標と、日本政府が掲げる2050年までにGHGの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを達成するという目標に準拠すべく、GHG排出量削減目標を「2030年度30%削減(2021年度比)」と設定し、サステナブルな経営の実現を目指しています。今後、サプライチェーン全体の排出量を把握するため、Scope3の排出量算定を検討しています。当社グループ全拠点におけるScope1・Scope2のGHG排出量の実績は以下の通りです。

GHG排出量と削減目標

2030年度目標として2021年度比30%削減、2050年度目標としてカーボンニュートラル(GHG排出ゼロ)を掲げる

環境負荷低減に貢献する取り組み

当社グループの事業活動におけるGHG排出量削減

環境負荷低減に貢献する取り組みとして、輸送網や物流拠点の最適化などを推進し、輸送によるGHG排出量削減に取り組むとともに、環境負荷の少ない施設・設備への入れ替えを順次進めています。

  • 電力使用量監視システムの導入
  • 照明器具のLED化
  • 人感センサー・昼光利用センサーの導入
  • HV・EV車の導入
  • 太陽光パネルの設置(宮城物流センター・兵庫物流センター)
  • 電子化によるペーパーレスの実施
  • 森林認証紙・再生紙の使用
  • 高効率空調機の導入
導入したEV車
兵庫物流センター

各事業会社による環境負荷低減の取り組み